人によって求める家の理想像は様々。
大きな家・省エネな家・耐震性の高い家・家具と過ごす家…。
私も長い時間をかけ家の在り方を考え、調べ、試行錯誤してきた。
その時々に取捨選択を繰り返した。
今回は今までの家づくりを振り返り、遂に見つけることが出来た理想の家について紹介。
広さ
我が家の家づくりは近所の住宅展示場からスタートした。
同僚や先輩が建て満足度の高い一条工務店・大和ハウス・積水ハウス。
有名どころから見学を始めたが、あまりの高さに驚愕。
身の丈を知り、すぐさまローコストハウスメーカーへシフト。
そして次に向かうはタマホームから分家したレオハウス。
タマホーム同様ローコストメーカー。
今まで見たハウスメーカーより格段安く、35坪の家を予算内で提案された。
初めて見る我が家専用の間取り図・外観図に興奮。
しかもレオハウスの中ではハイグレード。
もう契約してしまいそうになった。
だがこの時は家が欲しいと思っていた時期より2年も早かったため一時保留。
ホントは今にも家を建てたくなってしまい、妻を説得したが失敗。
逆に時間をかけて家づくりをする決意が固まった。
性能
レオハウスで家を建てようと考えていたら同僚に止められた。
「俺らの給料ならもっといいところで建てられるよ!一条工務店で建てなよ!」
その同僚は一条工務店で家を建てていた。
また同僚は共働きで奥さんはナース。
一方我が家は、妻には専業主婦でいてもらい一馬力。
同僚と私の年収は同じでも世帯年収は倍近く違う。
『こっちは一条工務店を見ておおよその価格は知っている。無理に決まっている…』
心の中ではそう嘆きながらも、同僚の猛プッシュを断り切れず再度一条工務店へ。
するとどうだろう。
金額面から躊躇していた一条工務店にみるみる心を奪われていった。
特に数値による説明、全館床暖房の快適性には惹かれるものがある。
宿泊体験までし本気で建てたいと思った。
しかし価格は無情…。
35坪で考えていたレオハウスから30坪を切る一条工務店。
『こんな小さな家には住めない』
性能と広さのシーソーゲーム。
でもやっぱり建てたい。
だが時間は待ってくれず、毎月のように坪単価値上げは繰り返される。
さらに小さな家を提案されていく。
同時期、地元のパッシブデザインを得意とする一級建築士も検討したが、予算内では25坪も建てられないことから断念。
やはり広さを求めていたのだろう。
中間
性能に未練を残しながらも他の建築業者を模索。
次は1階のみ全エリア床暖房のユニバーサルホーム。
地下熱を利用した床暖房に無垢床。
こちらも宿泊体験をして快適性を確認。
悪くない、良い感じだ。
予算内での提案で33坪と、レオハウスと一条工務店の中間。
一条工務店と相見積もりをし、広い家を建てられるユニバーサルホームに気持ちが傾く。
やはり日本という国民性なのか、なんでも中間が心地よく感じてしまう。
ユニバーサルホームはフランチャイズ。
一般の工務店がユニバーサルホームの商品を提供。
今まで味わったことのない工務店独特のアットホームさも好きだった。
ユニバーサルホームで建てようと心に決めていたこの時、同社が紹介してくれた不動産屋で土地を購入。
すると今度は不動産屋が新たな提案。
「地元でとても魅力的な家づくりをしている会社があるので、一度見てみませんか?」
心はユニバーサルホームにあったのだが、勉強のためにその誘いに乗った。
軽い気持ちで伺った新たな建築業者。
そこで私の家づくりに大きな変化が起きるとは思ってもいなかった。
オリジナル
次の家づくりは材木屋+建築デザイナーと、あまり耳にしないコンビ。
材木屋は住宅資材総合卸売業者で、主に資材の仕入れ・構造確認・工務店の手配を担当。
建築デザイナーは不動産や樹木の伐採を行う会社で、主に間取りや空間デザインを担当。
驚くことに両者とも建築士の資格を持たないが、20年以上建築業に携わってきた人たち。
知識が豊富で、私はこの二人からたくさんの事を教えてもらった。
今の建築業界は中間マージン合戦。
家はプラモデルであり、良い材料を使えば良い家が建つこと。
よくハウスメーカーでいう『自社オリジナル』というのは、柄や色を少し変えただけ。
建材一つ一つの特徴と裏話。
その他にもたくさん。
今までハウスメーカーや工務店で聞けなかった話がたくさん。
「うちには標準仕様なんてないから、好きな建材・間取りで世界に一つだけの家を建てていいよ。さらにうちは業者から直接仕入れをしているし、毎年たくさんの建築業者に資材を卸しているから底値で仕入れることができるよ。仕入れ元はどこも建材メーカー。うちは全ての建材メーカーと取引できるから、ハウスメーカーや工務店が建てる家なら全く同じものを安く建てることができるよ」
レオハウスを考え始めたころから間取りを書くのが趣味であり『大きな家に住みたい』という希望を持ち、一条工務店では性能に惚れるものの価格面から断念した経緯があるだけに心躍るものがあった。
『自分で家をデザインしたい!高性能でオリジナルな家を低価格で実現できる!』
確か当時の私はこんな気持ちで地に足がついていなかった。
もちろん建築のことなど今までハウスメーカー・工務店・建築士・ネット・本で1年程勉強しただけで、学校や仕事は無関係。
合わせて美的センス・空間認識能力が極めて低いことは自覚していた。
普通に考えたら馬鹿げた話だが、だからこそ家について本気で学びたいと思った。
今まで以上のスピードで本・ネット・様々な家を見て独学で勉強した。
本心から言えば建築学校にも通おうか悩んだが、やはり家庭がありそんな我儘は言えない。
家庭が無かったらもしかしたら行っていたかもしれない。
いや、それ以前に家庭を持っていなかったら家を建てたいとは思わなかったか。
個人でできることは思いつく限りやった。
もちろん家族も巻き込みいろんな所に見学に行った。
時には子供に幼稚園を休ませ県外にまで。
水回りメーカーではTOTO・LIXIL・Panasonic・トクラス・クリナップ・ウッドワン。
建材メーカーでは上記メーカーに加え、朝日ウッドテック・EIDAI・MARUHON・ノダ・無垢フローリング.com・YKK・三協アルミ…。
覚えているだけでもこれくらい。
どこも一度ではなく二度・三度、下手したらそれ以上話を聞きに行ったメーカーもある。
本やネットで気になる建築業者があれば話を聞きに行き満足のいく家を模索する日々、材木屋と建築デザイナーと間取りや材料決めをする日々は楽しくて仕方なかった。
新しい発見の毎日でワクワクが止まらなかった。
挫折
当ブログの大切な読者の一人に、私が家づくりで悩んでいるとき、そっとアドバイスをくれる方がいる。
ここではAさんと呼ぼう。
Aさんは私が気づいていない、知らない知識や、ご自身の辛い経験をコメントに書き込んでくださり、私からしたら何度もの軌道修正をしていただいたように感じた。
そんなある日、Aさんから私の地元の近くにあるひとつの一つの建築業者へ見学に行くことを勧められた。
信頼するAさんのオススメ、全く聞いたことのない建築業者だったが、何か我が家の参考になるものがあると信じ訪問。
するとどうだろう。
今まで何十社と訪れた建築業者と話すこと、聞かれることが全く違う。
『自社を知ってもらおう、気に入ってもらおう、今ならお得』等など…。
そんな猛アピールは一切なし。
『家のあるべき姿、心落ちつく空間とは何か、天井は低いほうが良い、子供部屋は3畳もあれば十分』
今までにない切り口で家についての話を聞き、正直私たち夫婦は気持ちが追い付かなかった。
だが少しずつ意図する写真や模型を見せてもらい気持ちを整理。
いつの間にかその建築業者に虜になっている私たち。
別れ際に一言。
「もし良かったら現在建築中の家を見に来ませんか?」
答えはもちろんYes。
日を改めて建築現場を訪問した。
完成間近の家は養生シートが張り巡らされているのにも関わらず、私たちをいとも簡単に魅了した。
何に魅了されたのか?
正直、当時の私たちはそれすら分からなかった。
木製サッシ?障子?羅列された梁?漆喰の壁?造作キッチン?
もちろんそれらも一因だろうがそれだけではない。
今でも答えを探している最中だ。
ただ一つ確信したこと。
それは建築素人の私が自分で家をデザインするには限界がある。
泥沼
この建築業者を見てからは悶々とした日々が続いた。
素人が作成した継ぎはぎプランの家を建てるか、今まで見たことも感じたこともない感動の家を建てるのか。
予算を合わせ家の大きさで比較すれば、延べ床面積で5坪の差が出る。
まだ広さに未練が残っていること、学んだ事を活かしたい気持ち、半年以上も無償でサポートしてくれた材木屋・建築デザイナーへの義理…。
私が出した答え。
魅力的な建築業者は忘れ、材木屋・建築デザイナーと共に家を建てる。
そしてまず建築デザイナーと契約を交わした。
とは言いつつも、魅力的な建築業者の家から受けたインスピレーションをどうにか我が家に組み込めないか模索した。
空間の広がり・家の中と外の繋がり、光と熱の出入り、家族一人一人の幸せ…。
多角的に家を見直し調整。
魅力的な建築業者に追いつこうという気持ちがあった。
だけども一向に背中が見えてこない。
追い打ちをかけるように、私のプランは耐震性に不安があると発覚。
そりゃそうだ。
私は家づくりを本業(サラリーマン)と家庭の合間に独学で学んだだけ。
まさに付け焼刃。
立体的に家を考えることはしても、所詮はパズルだったのかもしれない。
一方、魅力的な建築業者は何年も家に向き合い生きてきた。
学んで、試行錯誤して、建てて、そこからまた学んで、より試行錯誤して、また建てて…。
生半可な覚悟ではない。
そんな人の背中なんて見えるはずがないんだ。
このことに気づけたのは材木屋と建築デザイナーとのトラブルがきっかけ。
簡単に言えば、建築デザイナーに家づくりの計画段階で「あなたの家は建てられません」と断られた。
そして報酬金の81万円を請求された。
何重にも嘘を重ねて。
結果としては建築デザイナーとも材木屋とも契約を解消し、81万円は支払わずに済んだ。
詳しくはこちらをお読みください。
この一件で家について深く考え直すきっかけとなり、再度模索の日々が始まった。
半ば強制的でもあったが、新たな家づくりのスタートを切った。
家について考える
施主主体の家づくりには限度があることを知った。
むしろ素人が間取りなど書いてはいけないとすら感じた。
たとえ自分でデザインした家を建てたとしても、それは良い家ではなく『自己満足な家』でしかないのではないだろうか?
家が建った当時は考え抜いたプランが形となり達成感でいっぱい。
しかし20年後・30年後にはメンテナンス等も含め、自分の過ちに気づくのかもしれない。
それは家が建ってすぐ大地震が来て気づくか、老後に足腰が弱り2階のお風呂へ行けなくなり気づくかはわからない。
将来子供が増えるのか、文化の違う留学生を受け入れるのか、親が一人で生活をすることになったら一緒に住むのか…。
建築士は建築のプロであっても、私たち家族のことは何も知らない。
だからこそ伝えることが必要。
いや、建築士が様々な情報を引き出すことが重要と言った方が正しいか?
今までの生活や思い出、今後送りたい生活を。
それらをプランにしてもらい、伝えきれなかった想いや現状を再確認しまた伝える。
自分で手を加えるのでなく、建築士に部分的・全体的に練り直してもらう。
私が今までの経験から導いた答えだ。
うん、やっと気づけたのかもしれない。
理想
今までの経験は無駄ではなかった。
むしろこの経験があったからこそ自分で家をデザインする脆さに気づけ、プロに一任しようと導き出せた。
そして我が家を建ててもらいたい理想の建築業者像が見えてきた。
第一に家が好きなこと。
『なにを馬鹿なことを言っている?』
そう思われても仕方ないが、これがホント大切。
常に家・建物・家具・自然のことばかりを考える。
家を産業と捉えず、本気で住み手の幸せを模索するような人に我が家を建ててもらいたい。
第二に確かな判断軸を持っていること。
時には頑固も悪くないが、それだけではない。
私が誤った(不要な)提案をしても、自分の経験と感性を信じ修正してくれる。
雑に言えば施主の要望の仕分け。
性能・空間・金銭など、今まで培った経験と研ぎ澄まされた感性で仕分けをしてもらいたい。
またその裏付けに納得できたり、いつの日か気づくことができたら幸せだ。
第三に一人の信頼できる人に頼みたい。
一人では家は建てられない。
様々な人が関わり、議論し、チームワークで建てられる。
ただ家の説明はこの人、設計はこの人、デザインはこの人、アフターはこの人…。
たらい回しは正直辛い。
できる限り一人の信頼できる人にお願いしたい。
以前の家づくりで苦い思いもしただけ余計にだ。
選択
ハウスメーカー・工務店・建築士・建築デザイナー・材木屋。
様々な建築業者と家を見てきた。
どこが良くて、どこが悪い。
そういうことではない。
ただ私が理想とする建築スタイルがやっと見つけられた。
最後に選択したのは、建築士。
空間を一つ一つ大切に捉え、広さだけでも性能だけでも金額だけでもない。
信用できる魅力的な建築士に我が家をお願いしたい。
我が家
すでに信頼する建築士との打ち合わせはスタートしている。
そう、読者様であるAさんがオススメしてくれた『魅力的な建築業者』とだ。
一度は材木屋と建築デザイナーを選んだが、遠回りできたことで更にこの建築業者のことを信頼できるようになった。
まだ打ち合わせの回数こそ少ないものの、我が家には「大きくても27坪くらいかな」と、建築士の頭の中では少しずつイメージができているのかもしれない。
以前の私であれば27坪の家など受け入れられなかった。
だが今までの経験や、この建築士、読者様、ブログ仲間のおかげで気づくことができた。
~我が家のイメージ~
・木と触れ合える家
・外の良いところを取り込む家
・たくさん居場所がある家
・一般的な常識や規格に捉われない家
・経年美化を愛せる家
・むしろ小さな家
まだまだあるが大きくはこんなとこと。
そしてこの一つ一つが調和され、我が家の成長の背景になってくれたら幸い。
おわりに
マイホームを考えた当時は、ここまで家づくりにのめり込むとは思ってもいなかった。
なぜここまでのめり込めたのか振り返ると、やはりこのブログの存在は大きい。
ブログを書き、様々なアドバイス・感想をいただけるのが一番の活力。
家づくりを考えている人にはブログを強くオススメする。
もちろんSMSでもいいと思う。
より気軽に投稿できるし、始めのうちは人の目にも留まりやすい。
ただ私の場合はブログの広報活動の一因でSNSを活用しているので、やはりブログの方が家づくりに役立つアドバイス・感想は多い。
今の建築士に出会えたのも、Aさんという読者様のおかげ。
ホント感謝してもしきれない。
Aさん、ありがとうございます。
一人で抱え込まず、相談することは大切なんだな。
顔も名前も知らないし初対面だけど『人助けをしたい』と思う人はたくさんいる。
ネットの世界も捨てたもんじゃない。
つくづくそう感じる。
これからも家づくりについてどんどん記事を書いていこう。
また『家』について考えてくれる人が少しでも増えたら嬉しいな。
タイミングもあるだろうけど、家づくりって健康だったり、ゆとりだったり、その後の人生を大きく変えるターニングポイントであることに間違いない。
そのことを義務教育の中で教える時間があっても良いとすら感じるこの頃でした。