心も体も暖かい家づくり

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窓のグレードを上げると電気代はどれぐらい安くなる?家一軒の窓代は?

家のなかに光や風を通すの窓。
家の外観を左右する窓。
ただホントにそれだけだろうか?

窓の最大の仕事は室外の熱をいかに室内に持ち込まず、室内の熱をいかに室外へ逃がさないかだ。

冬場、暖房器具で暖められた快適な室内。
ただ暖房を止め朝を迎えるとどうだろう。
室内はキンキンに冷えなかなか布団から出れない。
暖房器具のスイッチを入れるために小走りで移動。
また室内が暖まるまで何枚も何枚も着込んで厚い靴下も履き朝の支度。
こんな経験はないだろうか?

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これらの原因は家の断熱性能に大きく関わりがあり、そのなかでも窓が占める割合はとても多い。

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室内の温度変化の50~70%は窓が原因だ。
逆に言えば窓の性能を上げれば室内は快適になりやすい。

YKKのショールームへ行った際に面白い実験があった。
様々なグレードの窓がどれ程熱を伝えるかというものだ。




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表面温度実験

上段→室外(窓の外)を1℃に室内(窓の内)を
26℃に設定
下段→室外(窓の外)を40℃に室内(窓の内)を
26℃に設定
窓のサッシ(フレーム)とガラスの表面温度を計測。

フレミングJ
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サッシ:オールアルミ
ガラス:2枚

APW310
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サッシ:室内樹脂・室外アルミ
ガラス:2枚+Low-E(断熱フィルム)

APW330
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サッシ:オール樹脂
ガラス:2枚+Low-E

APW430
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サッシ:オール樹脂
ガラス:3枚+Low-E2枚

サッシとガラスのグレードを上げるとこれほどにまで表面温度が変わる。

体感温度

室温がダイレクトに体感温度になる訳ではない。
体感温度とは…
『室温と直近の壁や床(窓も含む)の表面温度の中間温度』
でたるため、室温が26℃でも窓際にいて窓の表面温度が18℃だと体感温度は22℃になる。
もし窓の表面温度が22℃なら体感温度は24℃という仕組みだ。

夏場はアスファルトからの照り返しで気温より暑く感じたり、床暖房で足元が暖かいと室温が差ほど暖かくなくとも快適なのは、この体感温度のカラクリのためだ。
またアスファルトや床暖房のように足が直接触れていると、体感温度は更に接しているものの影響を受けやすい。

窓の表面温度分析

YKKの実験にあった4つの窓。
フレミングJ<APW310<APW330<APW430
このようにグレードも性能が上がることがお分かりいただけただろう。

冬場を想定した実験の窓表面温度を見てみよう。
(フレミングJとの温度差)

フレミングJ→18.2℃(±0℃)
APW310→20.9℃(+2.7℃)
APW330→21.3℃(+3.1℃)
APW430→23.5℃(+5.3℃)



次は夏場を想定した実験。

フレミングJ→32.9℃(±0℃)
APW310→28.6℃(-4.3℃)
APW330→28.9℃(-4.0℃)
APW430→28.5℃(-4.4℃)

窓の性能を上げると冬場は効果を大きく発揮するが夏は差ほど変わらない。

このデータから分かることは、冬が寒く長い地域では窓の性能を上げるに越したことはないが、暑い時期が長い地域では窓の性能はそこまで上げる必要が無い。

自分のお住まいの地域がどれくらいの期間、冷暖房を使用するかが一つの目安となる。
地域別の冷暖房期間はこちらにまとめてある。
地域により冷房・暖房を使用する期間が異なり驚かれると思う。
冷暖房日数|地域別比較

地域別推奨窓

北海道・東北→APW430
関東~四国→APW330
九州・沖縄→APW310

※あくまで私の主観であり、メーカーや専門家が推奨している訳ではない。

もちろん金銭的に余裕があるのなら有無を言わさずAPW430を使用した方が快適に過ごせる。
だがそのような家庭はごく一部だろうし、一般家庭では贅沢するところ・妥協するところがあるだろう。

続いて窓の性能を上げることによりどれ程電気代が節約できるか見ていこう。

窓別の電気代

少し窓の性能をおさらいしておこう。

フレミングJ
サッシ:オールアルミ
ガラス:2枚

APW310
サッシ:室内樹脂・室外アルミ
ガラス:2枚+Low-E(断熱フィルム)

APW330
サッシ:オール樹脂
ガラス:2枚+Low-E

APW430
サッシ:オール樹脂
ガラス:3枚+Low-E2枚

下図:左の欄にあるアルミはフレミングJ、真ん中の欄にあるアルミ樹脂複合(複層ガラス)はAPW310のLow-Eという断熱フィルムを張っていないグレード

【贅沢パターン】
エアコン設定温度 冬24℃・夏25℃
APW310
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APW330
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APW430
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【節約パターン】
エアコン設定温度 冬20℃・夏27℃
APW310
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APW330
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APW430
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※YKKの独自調査なため、保証するものではない。あくまで参考程度に。

電気代を分析

今回は東京をピックアップし電気代の差をみていこう。

※フレミングJとの差額
【贅沢パターン】
APW310
10,778円の節約

APW330
14,200円の節約

APW430
19,972円の節約

【節約パターン】
APW310
6,469円の節約

APW330
8,912円の節約

APW430
12,761円の節約

贅沢パターンではAPW310→APW330にグレードアップすると年間3,422円の節約
APW330→APW430にグレードアップすると年間5,172円の節約

節約パターンではAPW310→APW330にグレードアップすると年間2,443円の節約
APW330→APW430にグレードアップすると年間3,149円の節約。

窓の個数・金額イメージ

次に一つの家に必要な窓の数と金額を計算してみよう。
今回は以前私が書いた33坪の間取り図を参考に数え計算していく。
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引き違い窓:4箇所
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APW310:57,900円
APW330:59,200円
APW430:82,300円
※APW430には引き違い窓の設定がないため、近い『たてすべり出し窓(2連窓)』を採用。

たてすべり出し窓:5箇所
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APW310:33,800円
APW330:35,400円
APW430:45,200円

すべり出し窓:5箇所
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APW310:29,200円
APW330:29,700円
APW430:32,300円

引き違いテラス戸:2箇所
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APW310:104,800円
APW330:112,900円
APW430:286,100円
※APW430には引き違い窓の設定がないため、近い『大開口スライディング 均等タイプ』を採用。

勝手口ドア:1箇所
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APW310:不明
APW330:84,100円
APW430:99,500円


今回は合計17個の窓(勝手口ドア含む)で計算してみよう。
APW310シリーズの勝手口ドアは値段を調べることができなかったため、APW330の金額を採用させてもらう。

※カタログに載っているメーカー小売り希望価格を引用。

【APW310】

57,900×4=231,600
33,800×5=169,000
29,200×5=146,000
104,800×2=209,600
84,100×1= 84,100
合計 688,200円

【APW330】

59,200×4=236,800
35,400×5=177,000
29,700×5=148,500
112,900×2=225,800
84,100×1= 84,100
合計 872,200円

【APW430】

82,300×4=329,200
45,200×5=226,000
32,300×5=161,500
286,100×2=572,200
99,500×1= 99,500
合計 1,388,400円


APW310→APW330にグレードアップすると184,000円の増額
APW330→APW430にグレードアップすると516,200円の増額

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電気代と窓の価格まとめ

上記のデータを参考に『グレードを上げることにより、電気代の元をとれるか』検証してみる。

APW310→APW330にグレードアップすると…
窓の価格が184,000円の増額
贅沢パターンで電気代が年間3,422円の節約
元をとるのに53年かかる。
節約パターンで電気代が年間2,443円の節約
元をとるのに75年かかる。

APW330→APW430にグレードアップすると…
窓の価格が516,200円の増額
贅沢パターンで電気代が年間5,172円の節約
元をとるのに99年かかる。
節約パターンで電気代が年間3,149円の節約
元をとるのに163年かかる。

APW310→APW430にグレードアップすると…
窓の価格が700,200円の増額
贅沢パターンで電気代が年間8,594円の節約
元をとるのに81年かかる。
節約パターンで電気代が年間6,292円の節約
元をとるのに111年かかる。


これらのデータから言えることは

『APW310→APW330にグレードを上げエアコンを贅沢に使う生活をすれば、死ぬまでに元をとれる可能性がある』

『窓の性能を上げることで電気代の元をとることはまずできない!』

…なんとも残酷な結果になってしまった。


おわりに

今回は私の書いた間取りで窓の個数と金額をはじき出したためこのような結果になった。
ただ窓の個数を減らす努力をすれば、窓にかかる金額は減るだろう。
また窓と壁では壁の方が断熱性能があるため、窓を減らしたり小さくすれば家の断熱性能は向上する。
断熱性能が向上すれば電気代も安くなる。
電気代が安くなれば元をとれる可能性も上がる。

反対に窓を増やしたり大きくしては逆の道を進むだろう。

ただ勘違いしないでほしい。
窓の本来の目的は電気代を抑えることではなく、光と風を取り込み家のなかを快適にすることだ。
断熱性能を上げるためだけに窓を無くしたり小さくしすぎては、まるで地下室にいるような感覚になるだろう。
四季折々の光と風を感じられる生活の方が私は好きだ。
窓の仕事のひとつに『熱を少し遮る』という仕事があるのだ。

あともう一点。
電気代の元がとれないからグレードの低い窓にしようというのは違う。
(価値観にもよるだろうが)
グレードが高いトリプルサッシのAPW430を採用すれば、確かに金額は張るかもしれないし元はとれない。
しかし家のなかにいるときの快適性は最高に良いだろう。
冬であれば窓際から冷たい冷気が来なければ結露もしない。
結露をしないということは窓際にカビもはえない。

快適性に関しては記事中の実験データと体感温度の説明で確認できただろう。
快適な生活を送るための投資と考えたら決して高い金額ではない。
床暖房追加やインナーサッシ工事(窓の内側にもうひとつ窓を付ける工事)、付加断熱工事に比べたら破格の初期投資で快適性が実現する。

初期投資を抑えるか、快適性をとるか…
悩みの尽きない議題だ。

窓には適材適所がある。
風を通したい窓・熱を取り入れたい窓・熱を遮りたい窓・光を取り入れたい窓・臭いを逃がす窓・湿気を逃がす窓…etc

『ここは風通しを良くしたいな』
『ここには光を入れたくないな』
『ここは人の出入りがない場所だから、吐き出し窓より腰高窓だな』
などなど、快適性を上げるために試行錯誤して窓を選ぶと楽しくて仕方がない。

そのためにも間取り図を書くことをオススメする。
家のカラクリがだんだんと分かってくる。
そしていつしか窓の大きさや性能にぶち当たるだろう。
そんなとき、このブログをもう一度読み返してほしい。
どんな形であれ、窓で悩んでいる人の手助けになれば幸いだ。

今回は窓の性能だけで電気代と快適性を比べてしまったが、ホントはそれだけじゃない。
立地・間取り・壁・床・断熱材・設備(冷暖房器具や換気システム)・軒や庇(ひさし)など、まだまだ関係する部位は残っている。
ただ熱の出入りが一番多い窓は最重要課題だ。

いつかしかこの全てを調べて、できればデータ化してまとめることが私の夢だ。
(ホントにできるかな?)

今回はYKKのデータを多く手にいれることができたが、他社の窓データも手にいれ分析できたら幸せだ。

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