光熱費が高い家、安い家。
どちらが良いかと聞かれれば、誰もが安い家を選ぶだろう。
しかし現実は住宅を購入するときに注目しがちなのが、外観・大きさ・設備など目に見える部分。
数十年と長く住むマイホーム。
重要なのは見た目なのだろうか?
想像して欲しい。
寒さがこたえる冬。
家に帰ると安らぐ。
ほんのり暖かいマイホーム。
スリッパも靴下も履かずに素足で家中を歩き回れる。
ゆっくり、ゆっくりと。
暖房の効いていない廊下やトイレでも急ぐ必要がないのだ。
そもそも家に帰ってあわててストーブを点火しなくて良い。
こたつに潜る必要はない。
家中が暖かいのだから。
どこにいても快適な家。
そんな家が実現出来るのだ。
今の暖房費の半分以下で。
どうだろう?
これらは決して夢物語ではない。
十分に実現可能な事なのだ。
このからくりを見ていこう。
次世代省エネ基準
平成11年に国が定めた新基準。
大手ハウスメーカーはこの基準ギリギリで建築している。
ただこの基準、本州では従来より1.5~2倍もの暖房費がかかるものであった。
北海道に関しては基準値が高く問題ない。
しかし本州になると基準値が極めて低く設定されている。
もともと北海道は全館暖房(家全体を暖める)が当たり前であったが、本州はストーブ・こたつのように部分暖房(一部又は一部屋を暖める)が主であった。
この考えが適用された次世代省エネ基準。
今までより少ない暖房費で過ごせるのは苦しくも北海道だけだ。
暖房費を抑えるポイント
暖房費を飛躍的に抑える3つの設備、断熱材・窓とサッシ・換気システムを紹介していこう。
断熱材
さまざまな断熱材が溢れる昨今。
正直どの断熱材を使用しても性能にたいした差はない。
グラスウールは職人の腕により性能に差が出るが安い。
吹き付け断熱は気密(隙間が少ない)がとれるが木が呼吸できない。
メリット・デメリットがあるため、あとは自分の好みに合わせて選ぶだけだ。
ただこの断熱材、厚さに比例して性能は上がる。
どれだけ厚くできるかがポイントだ。
しかし断熱材を厚くすればもちろん壁も厚くなる。
断熱材を厚くするには家の柱を太くしたり、柱の数を増やしたり、壁の強度を上げる必要がある。
単純に断熱材を増やせば良い訳でなく、その他の部分にも投資が必要なのだ。
窓とサッシ
昔はシングルガラスが主流だったが、今はペアガラスが主流になり、高性能を謳うハウスメーカーはトリプルガラスを採用している。
ペアガラス・トリプルガラスの場合、ガラスとガラスの間に熱を通しにくいアルゴンガスを封入することで性能を上げている。
またガラス間の隙間を広げれば広げるほど断熱性能が上がる。
ガラス表面に金属膜を加工したLow-Eガラスも断熱性能を上げる上では必須だ。
サッシについては
アルミ<アルミ.樹脂複合<オール樹脂<木製
の順に性能が上がっていく。
私の見解としてオール樹脂は欲しいところだ。
換気システム
現在の住宅は第1種換気、第3種換気が主流だ。
第3種換気とは、トイレ・キッチン・脱衣場などの換気扇から室内の空気を排出し、各部屋にある吸気口から外気を取り込む。
第1種換気とは、機械で吸気と排気を制御するシステム。
また熱交換システムを採用しているものがほとんだ。
この熱交換システムとは…
熱交換率 80%
外気温 0℃
室内温度 20℃
このような状況下であれば、外の0℃の外気を室内に取り込まず、熱交換の力で16℃の空気を室内に取り込む。
2時間毎に家中の空気を全て換気する事が法律で義務付けられた。
第3種換気だと、室内を暖めても暖めても外気がそのままの温度で入ってくるため、なかなか暖まらない。
しかし第1種換気だと熱交換をし、外気を室内へ取り込むため暖房費が安くなる。
暖房費88%削減
ここからが本題だ。
いくら良い設備を入れたところで、どれだけ暖房費を削減できるかイメージできなければ不安だろう。
今回は東京で120㎡の家に住んだと仮定して、次世代省エネ基準の家を少しずつ改良すると、どれ程暖房費が削減できるか見ていこう。
また今回は電力だと地域差、電力会社との契約内容の違いによりばらつきがあるため、灯油換算で表記していく。
現在の灯油価格はだいたい1L/90円なので、そのイメージで計算していく。
東京で次世代省エネ基準をクリアする断熱基準
天井:吹込グラスウール195mm
壁 :高性能グラスウール16K83mm
床 :敷グラスウール80mm
窓 :アルミサッシ,ペアガラス,ガラス間6mm
換気:第3種換気
上記性能で灯油換算:492L/年(44,280円)
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換気:第1種熱交換型
壁 :高性能グラスウール16K100mm
換気・壁の断熱材を変更
灯油換算:359L/年(32,310円)
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窓 :アルミ&樹脂複合サッシ,ペアガラス,ガラス間12mm
更に窓を変更
灯油換算:251L/年(22,590円)
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窓 :上記性能にアルゴンガス・Low-Eガラスをを追加
更に窓の性能アップ
灯油換算:216L/年(19,440円)
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窓 :樹脂サッシ,アルゴンガス,Low-E,ペアガラス,ガラス間12mm
窓のサッシを樹脂に変更
灯油換算:159L/年(14,310円)
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南面の大型窓に断熱ブラインド追加
灯油換算:145L/年(13,050円)
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天井:吹込グラスウール400mm
床 :敷グラスウール100mm
天井・床の断熱材の厚さを変更
灯油換算:125L/年(11,250円)
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壁 :高性能グラスウール16K210mm
壁の断熱材の厚さを変更
灯油換算:60L/年(5,400円)
※全ての家でこの数値が出るとは限らない。
窓の大きさや数・日当たり・気候によりこの数値は大きく変化する。
また断熱性能を上げることにより、暖房を使う日数を減らすこともできる。
まとめ
この結果には驚きだ。
次世代省エネ基準ギリギリで建てられた家は年間で44,280円分の灯油を使うのに対し、性能を上げた家は年間で5,400円分の灯油しか使用しない。
88%の暖房費削減ができるのだ
この家の凄いところは少ない暖房で家がすぐに暖まり、保温力の高さで一度暖まった家はなかなか冷めないという点だ。
壁を厚くし断熱材をたくさん詰め込めば性能は上がる。
しかしこれにはお金がかかる。
その点、窓の性能を上げるのは壁厚よりお金がかからない。
全てを取り入れることができれば、それに越したことはない。
ただ限られた資金の中でこだわりを出すのであれば、キッチンや家の大きさだけに投資するのでなく、このような家の快適さに投資をすることもアリだと思う。
キッチンなどは消耗品であり、いつかしか修理や交換が来る。
その点、窓や断熱材は一生ものだ。
また暖房費という面から見ても毎年数万円が浮く計算になる。
浮いたお金で新たな家具や設備を購入するもよし、毎月の家計費を抑えてゆとりある生活をするのもよし。
自分達にあった家づくりをしてほしい。
そのなかで断熱性能を上げるという考え方、光熱費を抑えるという考え方が頭の片隅に残ってくれることを願いこの記事を書いた。
また断熱性能を向上させれば、夏場の冷房費も抑えられる。
しかしこの家のメリットでありデメリットとして『少ない熱で家中が暖かくなる』という側面がある。
夏の暑い日差しで室内は簡単に暑くなる。
そのために必要なのは軒であり庇(ひさし)である。
また外付けブラインドや簾(すだれ)、グリーンカーテン(へちまなど)も効果的だ。
このように家の中に日差しを入れなければ少ない冷房費で快適な家になる。
更には通風や熱の移動を考えた家づくりにより、冷房を使う日数を減らすことができる。
快適な家を知らない人は
『冬は寒さを我慢する』
このような考えだが、快適な家を知っている人は
『寒さを我慢する必要がない』
このように考える。
我慢せずに今までより少ない光熱費で過ごせる家。
そんな家が私の夢だ。