「木は使えば使うほど魔法の素材」
「地元産の木を使った建物にしたい」
「木は人間に特別な響き方をする」
「日本大工の木を扱う腕、ヨーロッパの加工技術がガッチャンコしたら良い」
「木を日本建築の柱にしたい」
会場は隈研吾(くま けんご)さんが設計した、東京大学ダイワユビキタス学術研究館。
主催は同氏が校長を勤める高知県立林業大学校。
冒頭紹介した言葉は講演会にて、私の心に残った隈さんの言葉の数々です。
隈さんが東京大学ダイワユビキタス学術研究館で講話だなんてまさに見て・聞いて・感じれた、とても幸せな時間でした。
この記事では講話をもとに、隈さんの流儀や魅力的な建物を紹介していきます。
この記事から隈さんの想いを少しでも感じてもらえたら嬉しいな。
でも写真を流して見るだけでも幸せな気持ちになれますので、是非とも記事最後までスクロールしてみてください♪
それでは隈研吾ワールドへ行ってらっしゃいませ~(^^)
隈さんと歩む町
[引用:雲の上の町ゆすはら]
日本一の森林率84%をほこる高知県に『雲の上の町』とも呼ばれる梼原町(正式:檮原町-ゆすはらまち)があります。
梼原と隈さんは30年来の付き合い。
自然が豊かで戦前から林業が盛んな町です。
梼原産の木を使った隈さん設計の建物が町には多く建ち並び、町民や観光客の心を豊かにしています。
まずはそんな梼原町から見ていきましょう。
竹照明
[引用:竹虎四代目がゆく!]
コストが上がり納期が延びることから、なかなか職人と話をする機会の少ない隈さん。
梼原では職人と話をするだけでなく、飲む機会も多かったそう。
こちらの写真は竹職人と飲みながら設計した照明です。
細かな寸法や光の温かみなど、職人ならではのアドバイスを頂くことができたようです。
雲の上ギャラリー
[引用:梼原町×隈研吾建築物]
隈さん建築において木と鉄を併用したハイブリッド建築はこの木橋がはじまりです。
[引用:梼原町×隈研吾建築物]
幹から枝が延びるような特殊な形を本物の木で建築するこの木橋は、世界中を探しても梼原だけ。
[引用:梼原町×隈研吾建築物]
梼原産の杉をふんだんに使い、周りの豊かな自然と会話をしているかのように寄り添う木橋。
まるで建物の中にいるのを忘れてしまうかのような空間です。
[引用:梼原町×隈研吾建築物]
年間のほとんどは窓を開け放ち公開されています。
浮きながら森を一望する感覚も、梼原が『雲の上の町』と呼ばれる意味を体感できる特別な場所です。
雲の上ホテル・レストラン
[引用:雲の上の町ゆすはら-観光情報]
梼原産の木・水・空気を感じれる、非現実のようで心暖まる空間です。
[引用:梼原町×隈研吾建築物]
昼と夜では全く別の表情を見せることから、一日中ずっと心踊る空間とも言えます。
[引用:flickr]
今では日本中探してもなかなか見つからない茅葺き(かやぶき)職人さんが、この梼原に一人います。
その茅葺き職人さんのつてで全国から茅葺き職人を集め施工したそうです。
ヨーロッパでは茅の先端を下(軒先)にする文化に対し、日本は茅の根本を下にする文化。
優しい表情を見せるヨーロッパ式の茅葺きに対し、カチッとした凛々しさを見せる日本式の茅葺きからも、日本人の美意識やディテールを強く感じます。
梼原町立図書館(雲の上図書館)
[引用:奥四万十情報発信局]
四段に並ぶ切り妻屋根。
一番奥の大きな屋根がある部分は福祉施設です。
また図書館の前に広がる芝生スペースは図書館でありながらお隣の幼稚園の子供が遊ぶ場所であり、子供からお年寄りまでが言葉通り垣根なく交流できる空間です。
その中心に図書館があるだなんて素敵ですよね。
[引用:隈研吾建築都市設計事務所]
上を見るのが楽しくなる天井、梼原産の杉をふんだんに使った空間に目が行き勝ちです。
でも一番注目してほしいのは赤ちゃん。
良く見てください、素足です。
この図書館は入り口で靴を脱ぎ館内に入ります。
隈さんも設計段階で靴を履くか脱ぐか、とても悩まれたそうです。
しかし裸足で回れる館内にし町民の笑顔を見るなかで、裸足の図書館にした決断は間違っていなかったと言っていました。
こんな図書館が住む町にあったら幸せだろうな♪
他の町に移住したくなくなるだろうな(^^)
日本の価値観
最後は梼原町でなく、現在注目を集める建築途中の建物です。
世界から注目を集めていて、みなさんもニュースで見たことのある建物でしょう。
新国立競技場
[隈研吾設計-引用:JAPAN SPORT]
2020年東京オリンピックに向け建築中の新国立劇場は、神宮外苑の杜に建てられます。
自然豊かな森に建てることから、自然を壊さず調和する「負ける建築」を意識されています。
一度目のコンペではザハ案に決まりながらも白紙撤回となり、二度目のコンペでは隈さんの案に決まり現在建築中です。
両者の完成予想図を見ると、どちらが神宮外苑の杜に合っているか、建つべきなのか一目瞭然ですね。
[ザハ・ハディド設計-引用:web sportiva]
鉄とコンクリートで造形された圧倒的なザハ案に対し、日本の木を使い回りと調和する隈さんの案。
建物の高さも約3割り落とした隈さんの案は東京オリンピックだけを目的とせず、東京の町を大切にする心が感じられます。
[引用:au webポータル]
新国立劇場といえば、360°木材を使用した軒が特徴です。
軒に使われる木は47都道府県から取り寄せます。
配置も日本を表現するため南ゲートには沖縄→鹿児島…北ゲートには北海道→秋田…のように、その県の位置関係を大切にしました。
育った県が変われば杉の色が微妙に異なるのも見所の1つだと隈さんはおっしゃっています。
またこの木は大きな建築業者のみが加工できる大きな集成材ではなく、日本中の町工場が加工できる小さな修正材(30㎝)を使用します。
これもザハ案との大きな違いですね。
木が傷んで取り替えが必要になっても、小さな町工場で取り替え・補修ができる。
産業の集中化だけでなく、町工場の力を発揮できる場を提供する心遣いが見えました。
おわりに
隈さんはホントに木が好きなんだな。
本気で日本の建築を変えようとしているんだな。
有名都市だけでなく、小さな町から日本建築を支えているんだな。
最後に自然的と拍手を送る参加者。
それは決して建前ではなく、心から隈さんが建築に対する姿勢への希望の現れででした。
様々な感動を頂戴できた素晴らしい講演会をありがとうございます。
そしてどうしても行きたくなった、梼原町。
夢がまたひとつ増えました(^^)