『家づくりはパートナー選びで9割決まる』
この言葉、私も同感です。
住宅業界は1つの契約から多くの利益を上げやすい反面、少子高齢化・格差社会、先細りのなか激化し続けています。
自社と自分の利益を優先した家づくりが蔓延し、施主と向き合った家づくりをする住宅会社が少なくなってきたことからも、良いパートナーを探しだす難易度は上がっているのかもしれません。
『家は人生で1番高い買い物』という言葉は良い意味でも悪い意味でも日本経済を回す潤滑油。
このことは後で詳しく説明してあります。
今記事の内容はよく『まとめサイト』で見るメリットやデメリットを比較したものとは一線を引きます。
まとめサイトで見つけたハウスメーカー(以下:HM)や工務店が自分たち家族に合うとは限りません。
でもそれは当然なこと。
その家に住む家族の性格も、家づくりをサポートする人(営業マンや設計士)の性格も、十人十色なのですから。
家づくりの本質を知り、今後の参考となるよう以下の4点を詳しく紹介していきます。
- 日本の住宅業界事情とHMの影響力
- 注文住宅最大の利点
- ローコストHM・大手HM・工務店・設計事務所で家づくりをしてきた経験談
- パートナー選びで重視する点
- 家は経済を回す起爆剤
- 日本住宅を牽引するHM
- 大手HMの使命
- HMの家づくり
- HM流 家づくりの良し悪し
- 注文住宅最大の利点
- 心地良い家・売れる家
- 筆者の家づくり
- 家は買うもの?建てるもの?
- パートナー選び
- 伝えたいこと
家は経済を回す起爆剤
国はより多くの人に家を取得してほしいと、様々な制度で家づくりを後押ししています。
住宅ローン控除やすまい給付金などがそれに当たりますね。
我が家も計算したら合計300万円以上も戻ることが分かりました。
増税後に家を購入して得するケース~住宅ローン控除・すまい給付金シミュレーション
ではなぜ国はここまで補助を出すのでしょうか?
答えは簡単。
高額な買い物なだけあり、経済が回る。
国は住宅取得をこのように捉えています。
しかもHMや工務店だけでなく、数えきれないほどの職人や住宅設備メーカーなどで働く人々の雇用や利益を守れるのだからなおさら。
国は家を大きな産業とも捉えているからこそ、家を建てやすい環境を整えてきたのです。
日本住宅を牽引するHM
地域によりバラツキはあるものの戸建の内訳として、建て売り7割・注文住宅3割と言われています。
また注文住宅の内訳としては、工務店7割・HM3割です。
ザックリ分ければ『建て売り7割・工務店2割・HM1割』が戸建全体の内訳です。
たかが1割しかないHMですが国に及ぼす影響力は大きく、家に関する法律や制度を制定する際にもダイワハウス工業・積水ハウス・住友林業など、大手HMはその席に着き助言をしています。
一条工務店の急成長と『待った!』をかけるハウスメーカー8社
近年話題となっている空き家問題。
もちろんこればかりではありませんが、長期優良住宅や住宅性能表示制度は資産価値が下がりにくく、家を売った際にも次の住み手が見つかりやすい制度。
また、極端に短いと言われている日本の住宅寿命を延ばす効果も期待されています。
これらは賛否両論ありますが、大手HMの意見が大きく反映された制度であること、大手HMが日本住宅の未来を左右する企業であることに間違いありません。
大手HMの使命
大手HMに限った話ではありませんが、住宅業界は時代にマッチした家を住み手に提供し続けています。
現代で言えば東日本大震災以降、性能面では耐震・省エネ性・室内の空気環境に注目が集まっています。
プランとしてはスキップフロア・ユーティリティー・天井を高くすることなどが流行っています。
また、高所得者~低所得者まで幅広い商品ラインナップを揃えた住宅会社が多いことも時代の流れでしょうか。
タイムリーな話題では利便性から都心部に人気が集まるなか、郊外でも都心部に近い生活が送れるよう様々な付加価値をプラスした住宅モデルを創造すべく、2020年にPanasonicとトヨタ自動車の住宅部門(パナソニックホームズ・トヨタホーム・ミサワホーム)が合併します。
トヨタとパナソニック、住宅事業を統合-日本経済新聞
時代にマッチした家の在り方であり、先を読んだ家の在り方をリードするのは企業の体力があり企画開発に全力を注げる大手HMの特権であり、使命なのかもしれません。
これは大手HMならではの強みであり、むしろ日本の住宅業界全体をリードしているとも言えます。
HMの家づくり
全国展開するHMであればそれだけ多くの営業マンや設計士がいます。
しかし営業マンや設計士の力量がバラバラでは出来上がった家のクオリティが大きく変わり、良くも悪くも様々な評判が飛び交います。
提案力や品質にバラツキがあっては企業としてよろしくないでしょう。
一定以上の提案力・品質を保つ必要があり、様々な手法でカバーしています。
提案力ではHMに入社して数ヵ月(だいたい3ヶ月)の研修を受けたのち、自社の家が売れる確率の上がるマニュアルを覚えます。
接客時には標準化された企画住宅に住宅設備や部屋の広さ、配置を組み合わせて提案することで、一定以上の案内ができます。
とは言っても、やはり経験のある営業マンや設計士の方が提案力は上です。
新人時代は上司の元で修行します。
ただ工務店や設計事務所と比べると、一人で仕事を任されるまでの期間が短いとも言えるでしょう。
以前は『習うより慣れろ』といった風習が根強く2週間程度だった研修期間も、今では3ヶ月前後に延びています。
品質では材料を現場で加工する手間を少なくするよう、工場の機械にてほとんどの行程を済ませます。
これにより、職人の腕に左右されにくい家が建てられるのです。
また施工後も収縮のある無垢の木材など、自然素材と呼ばれる扱いの難しい素材はほとんど扱いません。
寸法安定性の高い新建材と呼ばれる材料を多用します。
この背景には人材不足や人の力量に左右される欠点を解消したいというHMの思いがあります。
言い方を変えれば、『誰でも一定以上の提案力と品質を提供できるシステムを構築した家づくり』こそがHM流の家づくりでしょう。
HM流 家づくりの良し悪し
HM流の家づくりによって経験の浅い社員でも家を提案しやすくなり、技術の進歩から工場加工も増え、人の力量に左右されにくい時代をつくり出しました。
またHM流の家づくりは品質を保ちやすいことから、経験豊富な工務店の『人の手で建てる家』よりも、HMで経験の浅い社員が提案する家の方が長期優良住宅やZEHに対応しやすい時代でもあります。
国からの補助が受けやすかったり、家を売却するときの金額が上がったりといった利点もあります。
ただし欠点があるのも事実です。
1度目の打ち合わせで住み手の要望をまとめ、2度目の打ち合わせでプラン提案。
1~2時間程度のヒアリングではその家族の性格は分かりません。
ましてや住み手は家に対する知識がなく、『欲』が多くて『夢』が見えていない要望を伝えるのですから。
その『欲』を全て反映させたプランに、本当の心地よさは宿りません。
「夢を叶えて欲を抑える」良い間取りを手にする3つのコツ
マニュアル通りの営業マンは、トレンドや溢れた情報を元に提案をする傾向が強いことから、多数決的な家となり、家族の性格は反映されません。
ただそれ以上に人の力量に左右されない安心感であったり、国が勧める高い基準の家を建てたいのであれば工務店や設計事務所より魅力的です。
注文住宅最大の利点
打ち合わせのなかで間取りを変えられること、キッチンや床暖房などの設備を選べること、壁紙を選べることなど『自由度が高い点』が注文住宅において最大の利点だと思い込んでいる人が大多数。
でもそれは半分正解で、半分間違えです。
注文住宅最大の利点は、予算・家族構成・新居での夢を伝え、プロのフィルターを通した上で『その家族に最良の家を提案してもらえること』の他なりません。
その提案にはキッチンの形状・床暖房の有無・壁の素材や色など、家の全てが含まれます。
プロの目利きによって提案されたプランを元に家族で話し合い、細かな微調整を繰り返す。
その過程で家を大切にする心だったり、その家に住むイメージや住み方をプロに提案してもらえることこそが注文住宅最大の利点なのです。
提案に対して住み手が納得できるプランや説明をできないプロは、プロではありません。
ここで言う『プロ』とは家を売ることを目的とした営業マンや設計士のことでなく、家の心地よさを探求し続け、その家族にだけ合ったプランを提案できる営業マンや設計士、はたまた大工やコーディネーターを指します。
心地良い家・売れる家
SNS・雑誌・ネットでよく目にする華やかな空間を同じように作ることは比較的簡単です。
同じもの、同じようなもので再現すればいいのですから。
でも他人の華やかな空気には自分たち家族の性格が全て反映されている訳ではありません。
そのためすぐ飽きてしまったり、何か足りなかったり多かったりするでしょう。
それが変えられるものなら良いですが、変えられないものだったとき『こんなはずでは…』となるケースが多いのも事実です。
ですが、この華やかな空間に心を奪われる気持ちも分かります。
自分の好きな空間で生活したいですもんね。
でも悲しいかな。
この切り取られた華やかな空間や、トレンドや多数決的なプランには家族の生活が反映されていないことがほとんど。
多くの人はこのことに気づけず、安易に短期間でその時々の流行りに流されてプランを提案してくれた住宅会社を選んでしまいます。
『自由度が高い点』が最大の利点だと疑わず、『その家族に最良の家を提案してくれること』が真の利点だと気づけないまま…。
その結果はどうでしょう。
住み手の性格を理解した上で『心地良い家』を提案してくれる住宅会社でなく、住み手の言いなりに『売れる家』を提案してくれる住宅会社を選んでしまいます。
社員の雇用・利益・幸せを考えれば致し方ないのかもしれませんが、今の日本は『売れる家』を提案する住宅会社が多い現状です。
筆者の家づくり
我が家のイメージ図
私の家づくりのスタートはHMです。
限られた予算でなるべく広い家を建てようと、ローコストHM(レオハウス・ユニバーサルホーム)で35坪を基準に打ち合わせを続けました。
当時の私は初めて提案されたプランに『これが私の家か』と、感動のあまり契約寸前でした。
しかし、すんなり決まりすぎて着工・引き渡しまで期間があることから、知見を広げるため別のHMも見に行きます。
次が性能をウリにしている大手HM(一条工務店)です。
予算との兼ね合いで30坪弱と小さくなりましたが、性能面では心を奪われました。
ただプランはお世辞にも魅力の欠片もなく、心残りは大きかったですが諦めます。
次が地元の材木屋さん。
俗にいう工務店です。
ここが一番コスパが良く、一条工務店に近い性能で32坪程の提案を受けました。
今まで出会ったHMより提案力があり、居心地をより意識し始めたのもこの時期です。
そして最後が個人で設計事務所を営む建築士さん。
25坪と小さな家を提案していただきました。
今までのHMや工務店の家と比べれば、どうかしてると思われるほどの小ささですよね(笑)
でもこの家には我が家の価値観や流儀が詰まっていました。
我が家にとっての心地よさを教えてもらった、と言った方が正しいかもしれません。
こちらがそのプランです。
25坪の家に子供の遊び場が7箇所!?~小さな家の間取り~
最終的にこの建築士さんへお願いしましたが、その時々の率直な思いはブログに書き留めています。
失敗談など、家づくりで悩んでいる方の参考となることを願っています。
カテゴリー:マイホーム計画
合わせて家づくりのなかで学んだこと、気持ちの整理のしかた、住宅業界の裏側、各種ランキングも参考になれば幸いです。
カテゴリー:HM選び
※ 本記事はもうちょっと残っています
家は買うもの?建てるもの?
何度も打ち合わせを重ね、家族のためを思い、パートナー(営業マンや設計士など)と二人三脚で歩む家づくり。
それをお店に並んでいる物かのように『買う』という表現、なんだか寂しくないですか?
今まで苦楽を共に乗り越えてきたからこそ、家は『建てるもの』であって、決して『買うもの』ではないのです。
しかし注文住宅と言いながらも設備やデザインを提案するのでなく、決められた中から何回も選択をさせるパートナーもいます。
『提案する』のでなく『選択させる』ことで住み手に満足感を与え、あたかも注文している錯覚を味わわせる。
「グレードを上げたら○万円のプラスです」
なんて言われ、その繰り返しを1日で終わらす住宅会社も少なくありません。
前もって『夢』として抱いていた設備やデザインのイメージを抱いている施主ならまだしも、『切り取った華やかな空間』のような漠然としたイメージしかもっていない施主には楽しいようで苦痛の時間。
これらのことから『家は買うもの』といった意識が芽生えてしまうのも、もしかしたら致し方ないことなのかもしれません。
またマンションや建て売りのように、家の取得方法が多様化されている住宅業界。
『家は人生で1番高い買い物』という言葉が背中を押し、『家は買うもの』という意識が深く根付いたとも言われています。
更に怖いことに、『家は気軽に買えるもの』といった常識が蔓延しているのも事実です。
『転勤に応じて資産価値の落ちにくいマンションを買い替え、住み替える』
『退職するまでは職場の近くの安い建て売りに住み、退職したら地元に注文住宅を建てる』
このようなことが平気で語られる現代。
『多様化』『時代の流れ』といった言葉で終わりにして良いのでしょうか?
『家は買い替えができるもの』といった意識がいつの間にか常識となってしまったようで、悲しさを覚えます…。
でももし、このブログを読んでくださった読者の皆さんだけでも、『建てる』という意識と、言葉選びをしていただけたら幸いです。
「あなたと一緒に家を建てたい」
「あなたに家を建ててもらえて良かった」
こんなこと言われたら、パートナーもきっと幸せですよね(^^)
パートナー選び
私は様々な住宅会社と家づくりをし、様々な心地よさを教えてもらいました。
ローコストHMでは『広さ』という心地よさ。
大手HMでは『ブランド力・性能』という心地よさ。
工務店では『トータルバランス』という心地よさ。
設計事務所では『家族らしさ・空間』という心地よさ。
人により求める心地よさは違うでしょう。
どんな心地よさを選ぶかは人それぞれ。
私は一連の家づくりから、設計事務所にお願いしました。
当初は設計事務所など全く眼中に無かった私が、です。
考え方を変えれば、巡りめぐったからこそ設計事務所にお願いできたのかもしれません。
家づくりは時間をかけ、家族の性格に気づくことが一番大切なことだと痛感しました。
だから読者の皆さんにも色々な住宅会社を見てほしい。
そしてパートナーとして選びたい人が現れたならば、打ち合わせを進め間取り図でありプランをもらってほしい。
その過程で今まで知らなかった家族の一面を知り、家に求めるものが見えてくるはずです。
伝えたいこと
「工務店だから提案力がなく、設計事務所だから提案力がある」
「大手HMだから高く、ローコストHMだから安い」
このようなことを言う営業マンやネット情報は鵜呑みにしないでほしいかな。
あくまでも大まかな傾向でしかないので…。
家族にマッチした素敵な提案をする工務店があれば、小さな家を広く感じさせる工夫を凝らし、予算を抑えた提案ができる大手HMもあります。
ファーストコンタクトや打ち合わせにて『人』を見てください。
金額を釣り上げようとばかりしたり、施主の言いなりな人とは良い家を建てられませんよね。
時にはプロの目利きで施主の欲を抑えたり、施主以上に家族の本質に気づいたプランを提案したり。
そんな人をパートナーに選ぶことができたら幸せでしょう。
すぐには見つからないかもしれません。
ただ、家族の幸せと心地良い家を想像すれば、その過程も楽しくなるでしょう。
そしてずっと記憶に残る家づくりとなるでしょう。
読者の皆さまが、素敵な住宅会社と出会えることを願っています(^^)