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住宅業界の裏側をハウスメーカーの下請け工務店が告白

大工 ハウスメーカー 工務店

「お客様のためを思った家づくりをしているハウスメーカーなんてない」

ハウスメーカーの下請け工務店で働く友人の一言に驚かされました。

友人は地元の工務店で家を建てています。
小さな工務店では仕事がなかなか入らずハウスメーカーと専属契約をし、今ではそのハウスメーカーの家しか建てていません。
いや、建てることができません。

誰もが知る大きなハウスメーカー。
契約前までは仕事量と収入が安定すると希望を抱いていました。

しかし現実は無情。
職人としてのプライドを捨て、利益至上の歯車となり、ハウスメーカーの機嫌をとるための家づくりをせざるをえません。

知人からの話を多少オブラートに包みはしましたが、それでも過激な内容となっています。



建築会社でなく販売会社

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家を建てるのは誰でしょう?
ハウスメーカーの営業マンでも設計士でもありません。
大工さんや職人さんです。

厳密に言えば“ハウスメーカーと契約をした工務店“であり、この仕組みは注文住宅に限らず建て売り・マンション・ビルも同じと言えます。

ハウスメーカーは良く売れる家を何パターンか用意し、その家に施主の要望を反映させるのです。
特に営業マンで設計士の資格を持つ人は極めて少なく、施主に夢を与え購買意欲を膨らませ、自社で家を注文させる事に特化しています。

ハウスメーカーは家を建てる建築会社でなく、家を売る窓口であり販売会社と言えるでしょう。

【2018年度大手ハウスメーカー決算】売上1位ダイワハウス・販売戸数1位セキスイハイム

フルオーダーでなくセミオーダー

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フルオーダーと思われがちなハウスメーカーの注文住宅は工法・デザイン・設備がほとんどパターン化され、これらを組み換えることで家を建てるセミオーダーの家づくりの払えば出来ることが増えます。
しかし無垢の床や外壁、ハウスメーカーと取引のない企業からの材料・設備には高額なオプション費用が発生し、「保証が無くなります」「メンテナンスが大変です」などと、自社が扱う商品へ誘導することがほとんどです。
またはきっぱり「できません」と断るハウスメーカーもあります。

ハウスメーカーの家づくりは全てセミオーダーの家づくりです。
自社で家を建てるハウスメーカーはありません。

「お客様のため」と言うのは営業マンだけ

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下請け工務店は1つの現場(家)を1ヶ月目で仕上げようが半年で仕上げようがハウスメーカーから支払われる額は一緒です。
工務店の心理として
『この現場を早く終わらせ次の現場に行きたい』
『ハウスメーカーから多くの現場を提供されたい』
こう思うのは当然です。

ハウスメーカーからしたら仕事の早い工務店は魅力です。
良い工務店は他社にとられないよう仕事を優先的に回し、自社の専属でいてもらいたいでしょう。

この仕組みが工務店の感覚を麻痺させ、質よりも早さこそが正義だと錯覚してしまいます。
仕事をもらうため、自分の生活を安定させるための家づくりを、工務店でありそこで働く大工は優先してしまうのです。

「お客様のためのいえづくり」と言うのは営業マンぐらい。
工務店からしたら「自分のために家を建てている」といった感覚の方が大きいのです。

施主は現場に来ないでほしい

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「蓋をすれば分からない」
家を建てるにあたり、本来より少ない釘の量やずさんな工事も、壁を取り付け壁紙を張れば分からない。

質よりも早さを優先するがあまり、信じたくはありませんがこのような現場があるのも事実です。
建築のチェック体制が甘い日本の仕組みも後を押しています。

現代住宅の9割は欠陥住宅~住宅業界の裏側~

これとは別にハウスメーカーは施主に現場を訪れてほしくない理由があります。
まず『工務店が施主に真実を伝えるのを避ける』ことが挙げられます。

ハウスメーカーが用意した見積書には『壁紙:500㎡』と記載があっても実際には450㎡しかなかったり、500㎡も発注していないケースがあるからです。
施主からの質問に無垢な工務店が素直に答える可能性はゼロではありません。

また施主に家のことを訪ねられた工務店が
「この壁の位置は変だぞ」
なんて良心から言ってしまっても施主は良い思いをしません。
おそらく営業マンや設計士、ハウスメーカーに矛先が向くでしょう。

次に『馴れ合いを防ぐ』ことが挙げられます。
これは工務店を守る意味でも重視しています。

「ここにニッチが欲しいな~」
なんて施主が工務店にお願いをしたとしましょう。
ハウスメーカーを通して追加料金が発生すれば、手間賃も材料費も工務店に支給され問題ありません。
しかしハウスメーカーを挟まず工務店に直接交渉されてしまい、工務店がその望みを叶えたら材料費も手間賃も工務店もちとなってしまいます。

工務店としても、目の前にいる施主のお願いは断りにくいもの。
断わり方を間違えればクレームがハウスメーカーへいき、自分たちの評価が下がって仕事が減ってしまいます。
いっぽう評判が良くなれば自分たちの仕事は増えるが、貰えない材料費などが発生する…。

工務店を守るためにも施主を現場に行かせたくなければ、ハウスメーカーの信頼を落とさないためにも、現場見学をする際には間にの営業マンや現場監督が入り、現場の大工となるべくコミュニケーションをとらせないようにします。

値引きの代償はあまりに大きい

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お得感を演出するため、値引き前提の見積もりを出すことはハウスメーカーの常套手段です。
しかし他社との競合やノルマ達成前など、過度な値引きをするケースもあります。

この過度な値引きのしわ寄せは工務店にもきます。
1棟あたりの受注額が落ちれば、大工さんのモチベーションも落ちるでしょう。
そして割にあった仕事しかしないでしょう。
ハウスメーカーは利益率の低い現場を、評判の良くない下請け工務店に回す事が多いと言われています。

施主は大幅値引きで大喜び。
しかしその代償はあまりにも大きなものとなります。

契約までは主人公の施主

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知識が少なくモデルハウスに感動する施主。
このとき営業マンは施主の味方を演じます。

「このような家をあなたも手に入れられます」

男性は工法・材料・設備などハイスペックが好きな傾向があり、女性はおしゃれさ・動線・使いやすさを素晴らしい重視する傾向があります。
施主が興味を持つ要所を全面にアピールし、聞かれない事は基本的に答えません。

契約や仮契約を結んだあとに値引きをする事がなければ、あとは予算を釣り上げさせるか現実を伝えるだけです。
契約後は下請けに丸投げだったり、営業マンの対応が流れ作業になったり…。

モデルハウスと我が家の差、現実が見え始めてのから後戻りをしようとしても前払金が足かせとなり、気付いたら後悔しながら前へ進むか前払金を諦めるかの二択しか残されていません。

ハウスメーカーのご機嫌とり

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施主が現場を訪れた際に無地の作業着と頼んだハウスメーカーのロゴが入った作業着、どちらの方がそのハウスメーカーで家を建てている実感が湧きますか?
当然ハウスメーカーのロゴが入った作業着ですよね。

でもこの作業着、支給されるものではなく工務店が身銭をきって購入する制度がほとんど。

施主が現場を訪れる時だけ来てれば良いというわけではなく、その目は不定期に来る現場監督や営業マンの目まで気にしなくてはなりません。
また大工はハウスメーカーの広告塔として地域の人からも見られていることから、常にキレイな作業着を着る事が義務付けられています。

ワークマンで1,000円前後で買える作業着をハウスメーカーから3,000円前後で買います。
消耗品であるためその数はバカになりません。
また作業着もシーズンにより様々。
痛い出費だそうです。

もしロゴ入り作業着を着ていない事が発覚すれば、仕事がなかなかもらえなくなるまで発展します。


おわりに

もちろん全てのハウスメーカーが、今回紹介した事例に全て当てはまる訳ではありません。

しかしハウスメーカーという住宅業界の位置付けとして、『家を建てる企業』ではなく『家を販売し利益をあげる企業』であることは間違いないでしょう。
またハウスメーカーと専属契約をした下請け工務店は、このような苦悩を持ち合わせていることも事実です。

自分の家を思う気持ちがクレーマーというレッテルを張られてしまうのは寂しいこと。
割きりを持って注文住宅を建てるのであればハウスメーカーは良い選択肢の1つでしょう。
しかし拘りを強く反映させたい場合、マイホーム計画を楽しみたい、施工現場で大工さんから様々な話を聞きたい場合は、ハウスメーカーという選択肢は無くなるのかもしれません。

施主の想いを何よりも反映させた家づくりを提供する住宅会社を選びたいものですね。
過度な交渉や値引きは自分の首を絞めかねません。
『何を優先するのか』をしっかりと見定め、今後の家づくりに役立ててくれたら幸いです。

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